机の上には、歴代の仮面ライダーのフィギュアが9体、それぞれファイティングポーズをとって立っている。周囲には、テレビゲーム、小型テレビ、オーディオ2台、パソコン3台、動物図鑑多数、アイドルの写真集数冊、山積みのトレカなど。整然としたスペースではあるが、ちょっぴり怪しげな雰囲気だ。ほんとに仕事してるところなのかなぁ。





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取材の帰りに伊豆スカイラインを走っていると、夕焼けが綺麗なグラデーションとなって輝いていた。急いで車を停め、僕はデジカメを構えた。グラデーションだけを撮影するより、何かを入れた方が、よりドラマティックな写真になると思い、近くにあった木を手前に入れた。綺麗な瞬間に出合えば、ただシャッターを押すだけのデジカメでも十分に良い写真が撮れる。



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年賀状だから、本当は“朝焼け”を使いたいところだが、綺麗なので今回は良しとしよう。パソコンを使って、初めて写真に文字を入れてみた。黒い部分が多い写真なので、意外と簡単にできた。ただ文字を入れるだけでも、立派な年賀状になる。



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久々に多摩動物公園へ行き、ユキヒョウを撮影した。オスで、名前は“ヨシダ”という。ここではガラス越しにユキヒョウを見ることになるので、ガラスに余計なモノが映り込まないように注意した。多少、ガラスの青カブリはあるが、まずまずの出来である。



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表情がかわいいので、顔の部分だけを切り取ってもらう。バックの岩とユキヒョウが同系色なので、ユキヒョウの輪郭が浮かび上がるように、背景を落としてもらった。スタンプと足跡は、職人のゴッドハンドから生まれたもの。僕もいずれは、こんな技をマスターしたい。



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夜景の写真を使って、職人がクリスマスカードを作ってくれた。余白をうまく使ったデザインは、シンプルながらカッコ良い。この辺りが職人のセンスなのだろう。写真を素材としていじられるのには抵抗があるが、こういう処理なら許せてしまう。写真を大きく扱えば良いってものではないようだ。



年賀状を作ってみた


編集者Hさんの指令により、僕は“ドット絵職人”の仕事場を訪ねてきた。今日は、職人に弟子入りさせてもらうことになっているのだ。といっても、別にドット絵を習いに来たわけではない。デジカメで撮影した写真を使って、年賀状を作るのである。

「あの〜、放浪写真家の清水です。よろしくお願いします!」

「はい、どうも。どんな年賀状にするか、イメージできてますか?」

「いや、全然できてないっす。ち〜っとも、イメージが浮かんでません……」

「それだと教えようがないのですが……。じゃぁ、とりあえず写真を見せてください」

「は〜い」

何かを作るのにイメージがないというのは、教える方にとって一番やりにくい。前回、「テーマを決めて、イメージを浮かべてから撮影に行くと良い」などと書いた僕が、そんなことでは、よろしくないのである。職人の前で、早くも“問題児”ぶりを発揮してしまった。

「じゃぁ、文字でも入れてみますかね」

「ほほ〜、そんなことができるのですか。ふむふむ、そうしましょう」

職人の事務所に引いてあるネットワークに僕のパソコンをつないで、写真をやりとりできる環境を整えると、マンツーマンでの指導が始まった。画像処理ソフトは、僕のパソコンに最初から入っていたものを使うことにする。

まず最初に、写真をハガキのサイズに合わせた。デジカメで撮った写真とハガキでは、縦横比が違うからだ。そのあと、「A HAPPY NEW YEAR 2002」と入力。それを、職人に言われるまま、“クリック・クリック”すると、写真の上に簡単に文字を入れることができた。

「あらやだっ! すんごいねぇ」

基本的には、どんな写真にも文字は入れられるらしい。でも、背景はごちゃごちゃしていない方が良さそうだ。撮影時に、文字を入れるスペースを考えて構図を決めれば、後で処理しやすいだろう。

文字の色や配置は、入力した後でも自由に変更できる。写真に適したフォントを選ぶというのも、うまく見せるコツらしい。

「フォント選びや文字の大きさ、配置は、その人のセンスです。だから、イメージがあった方が処理しやすいのですよ」

職人は優しく言う。

今まで専門的なソフトがなければできないと思っていたことも、実は僕のパソコンに入っているソフトでできることがわかり、ちょっぴり感動。使ったことがなかっただけで、実は便利なソフトが入っていたようなのだ。

職人に何かを教わるたびに「あらまっ」とか、「ほほ〜」とか、「なるほど!」と、イチイチ声に出してしまった。そんな僕にはかまわず、職人はちゃっちゃか、ちゃっちゃか、慣れた手つきで文字の色を変えたり、グラデーションにしたり、斜めに配置したり、グニャグニャにしたり、勝手に遊んでいる。

「あっ、そんなこともできるのか! それくれっ! あ〜あ、消しちゃった」

遊んでいる職人を横目でチラチラ見ながら、僕は心の中でつぶやいていた。

「毎日、こういうことをやっているのですか? 楽しそうで、いいなぁ。ウラヤマシイ」

「いや〜、楽しいっすよ〜」

年齢が僕と近いせいもあってか、軽いノリである。楽しみながらフォントを選んだり、抜き文字にしたりしていると、あっという間に時間が過ぎてしまった。終電まで、あと1時間ぐらいしかない。

「やばい! どうしよう。肝心な年賀状が完成していないではないか……」

年賀状ぐらい“ちゃっちゃっ”とやれば終わると思って、夜になってから職人の仕事場へ行ったのだが、甘かったようだ。

「時間ないので、僕がやっちゃっていいですか? イメージはどうします?」

職人が助け舟を出してくれた。

「え〜と、“スタンプ”のイメージで、その中にユキヒョウの顔を入れたいのですが……できますか」

「なるほど。スタンプ調ですね。余裕です」

それからの職人は凄かった。愛機に向かうと、使い慣れたソフトを駆使し、どんどん画像を組み合わせていった。その動きの速いこと、速いこと。

「ユキヒョウの足跡とか、入るといいですよね」

という僕の要望にも、“職人技”を見せてくれた。職人は●を少しずつ加工して、足跡らしきものを作ってしまったのだ。「素材がなければ作る」という職人のゴッドハンドによって、あれよ、あれよという間に、僕のイメージしたものができ上がっていく。その間、30分弱。僕など「A HAPPY NEW YEAR 2002」という文字を入れただけで喜んでいたのに、なんなんだろう、この違いは。

“ドット絵職人”は、本当に“職人”であった。あっという間に作ってもクオリティーは極めて高く、かなり納得のいく年賀状に仕上げてくれた。怪しげなモノを集めていても、やるときはやるのである。

今回の弟子入りは、かなり勉強になった。デジカメで撮った写真を加工することの面白さを教えてくれた職人に感謝している。どうもありがとうございました。


by 清水哲朗

つづく

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