「フリースピリット」という名でバンド活動をしている友人がいる。ここのメンバー3人とは小学校からの付き合いだ。彼らは“ギンギン”のハードロッカーで、ライヴハウスでは、いつも熱く激しいパフォーマンスを見せてくれる。





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逆光の中、一瞬、ヴォーカルが浮かび上がった。息づかいまでが聞こえてきそうな瞬間を、デジカメで捉えることに成功。デジカメの場合、シャッターを押してから写真が撮れるまでに誤差(タイムラグ)があるので、先(次の動き)を予測して写真を撮る必要がある。「いいな」と思った時ではなく、「ここで来るかな?」のタイミングで何枚も撮るのだ。機種によって違うので、自分のカメラのタイムラグを知っておくことが“良い瞬間”を逃さないコツ。



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ギタリストにスポットライトが当たる。ライヴハウスの照明は、メロディーに合わせて雰囲気を演出してくれるので、アーティストにとっては欠かせないものだ。ここは彼の見せ場、ソロの部分である。スポットライトに浮かび上がったところを、大胆なフレーミングで撮影した。



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ライヴハウスで“煙”の演出を見たのは、実に久しぶりであった。煙は、逆光から半逆光(自分から見て、斜め前方に光がある状況)ぐらいの角度から撮ると、綺麗に浮かび上がって見える。煙に光が入らないと、ケムイだけで、綺麗には写らない。料理などで湯気を写す時にも、同じことが言える。このライティングテクニックは、知っておくと重宝するかも。



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ヴォーカルの激しい動きに合わせてシャッターを押すと、“光のにじみ”が撮れた。いや、「撮れた」と言うより、「撮れてしまった」と言った方が正解だろう。撮影した時は、「光が面白いな」と思っただけで、こんな写真になるとは想像していなかった。銀塩カメラでは、こんな風に写らないので、きっとデジカメ特有の写り具合なのだろう。



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ライヴは、かなり盛り上がった。お客さんの反応が良いと、アーティストも良い表情を“バンバン”してくれる。僕はこういう時、迷わず懐まで入って撮影することにしている。アーティストとお客さんの間に入り込んで撮影していると、両者の息づかいが直に伝わってきて、まさに“ライヴ”感を味わうことができる。しかし、このギタリスト、髪長いなぁ。ねぇ、YOSHIさん?
撮影テクニック−ライヴ撮影編


僕の小さい頃からの友人には、自由業が多い。陶芸家、ミュージシャン、イラストレーターなど分野はさまざまだが、会社員として社会に貢献している人は、不思議なぐらい少ない。「類は友を呼ぶ」のか、「友が類を呼ぶ」のか分からないが、最近は、彼らの他にも同世代の自由業の知り合いが増えてきた。

聞くところによると、世の中には「カメラマン」とか「ミュージシャン」とか呼ばれている人が“星の数”ほどいるらしい。街中で石ころを投げれば、どちらかに当たると言われるほど多いようだ。まぁ、人ごとではなく、僕もそのひとりなのだが……。

「フリースピリット」というバンドの友人達も、石ころに当たるミュージシャンだ。ライヴではいつも、かなり熱いパフォーマンスでお客さんを魅了している。

ノリノリな曲からじっくり聴かせる曲までいろいろあるライヴでは、撮る方も曲調に合わせて様々に撮影できる。ハードな曲はハードなイメージで、スローな曲ではしっとりとした、雰囲気のある写真を撮る。

しかし、フリースピリットのヴォーカルは、どんな曲でもやたらに動きまくって、止まって歌うということを知らない。

「こらっ! たまには止まれ、コノヤロ! いや、お願いだから止まってくださいまし」

とぼやきたくなるほど、パワフルに動きまくるのである。僕がタイムラグのあるデジカメで撮影していることなど、全然お構いなしだ。

結果は案の定、ブレていたり、画面からはみ出ている。まったくイメージ通りに写ってくれていない。

そもそも、普及版のデジカメで動きのある被写体を撮影すること自体、とても難しいのである。シャッターを押してから写真が撮れるまでに間があるので、「いいな」と思った瞬間にシャッターを押しても、もう遅い。良い瞬間に「待った!」と言っても、止まってくれるはずはないし、今回の撮影は、のっけから、かなりの苦戦を強いられた。

とはいえ、「状況が悪いから撮れません」では、写真家としての名がすたる。どんな状況にあっても、あきらめずに撮らねばならない。

僕は考えた。この状況を乗り切るためには、どうすれば良いのか。

 「いいな」と思った瞬間にシャッターを切る
   ↓
 画面から外れて写ってしまう
   ↓
 それは、なぜ?
   ↓
 シャッターを切るタイミングが遅いから
   ↓
 じゃぁ、どうすれば良いか?
   ↓
 動きを予測して、早めにシャッターを切れば良い
勘に頼って動体予測撮影するのは、ちょっぴり“リスキー ”だが、タイミングさえ合えばバッチリ撮れるはずだ。僕は、ライヴの最中に撮影法を変えてみた。

「あらよっと! ほれっ! よいしょっ! あれあれ? ウンウン」

最初はかなり苦戦したが、なんとなく状況が良くなってきていることが撮影中の感触で分かった。その後、何十枚も撮影し、徐々に感覚が慣れてくると、失敗は少なくなってきた。

「やるねぇ。さすが、まだまだ進化途中の放浪写真家!」

と自画自賛しながら、撮影する。良い写真というのは、自分の気持ちを高めることで撮れるものだ。

短い撮影時間の中で、いかに最善を尽くして撮影できるか、写真家としての力量が問われるところである。必要なのは、カメラだけに頼らず、足を使い、頭を使うこと。それと集中力。

まだまだ他にも必要なコトはたくさんあるが、経験が浅い僕は、すべてを使い切れていない。熟練の写真家は、そうしたことに長けているが、僕の場合は、撮影のたびに反省することが多いのである。

ライヴ撮影は、撮影法を変えたおかげで、かなり良い結果が得られた。光、タイミング、表情、かなりイメージした写真に近づいてくれた。

が、まだまだ納得できるところまでは程遠い。ライヴ撮影も、回数を重ねれば上達していくと思うが、撮るたびに、さらに上のレベルを求めることになるのだろう。

表現する者にとって大切なのは、向上心。すべては失敗と挑戦の繰り返しだ。成功は、一時的なものに過ぎない。

友人のライヴを撮影させてもらいながら、さらに上のレベルを目指して頑張らねばと思ったのである。


by 清水哲朗

つづく

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