1枚の写真の持つ力は大きい。1枚の写真で、物語の全てを語ることも可能である。「あなたが写真を撮る時は、考えて撮影していますか? それとも、何も考えずに撮影していますか?」。今回は考えて撮影する、という話。





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歩道橋の上から、車の曲がるタイミングを見計らってシャッターを切った。ここで大事なのは、左上にいる自転車の人の存在。この人がいるのと、いないのとでは、写真がまるっきり別の雰囲気になってしまう。実は、このとき、自転車の人を撮りたいがために、わざわざ車を待って撮影したのだ。



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最近は、個性的なビルを多く見かけるようになった。しかし、街をよく観察すると、瓦葺の屋根が残っていたりもする。どちらに惹かれるかは個人の趣味だが、僕はやっぱり瓦の方が好きだなぁ。このように比較するモノを1枚の写真の中に入れるのは、状況説明的な撮り方でもある。新聞に載っている写真は、手前と背景で物語になっているものが多い。



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最近、何かとお騒がせなバトルが繰り広げられている国会議事堂。ココは小学生の社会見学の必須コースになっていたりするので、シーズンになると、押すな押すなの大盛況になる。この日も、かなりの人であふれていた。手前の警察官は、国会議事堂を背に集合写真を撮る学校の誘導役をしていた。熱心に誘導している姿を、後ろから“ひょい”とデジカメ撮影してみた。



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僕はカラスグッズをコレクションしている。これは、そのうちの1つで、木製のカラス。背景に写っているのは、僕がモノクロフィルムで撮影したカラスのパネル張り写真。ちょうど同じような姿勢をしてるのが面白く、比較できるような角度を狙って撮影した。光は自然光のみで、適度に入るところで撮影した。



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モンゴルで購入したお土産の人形。 “ブツ撮り”をするときは、背景を自分で作り出してしまえば、イメージ通りの写真が容易に撮れる。今回は、遊牧民が刺繍したテキスタイル調の布を選んだ。ライティングは、窓際に置くだけの簡単撮影。窓際のライティングはテーブルフォトの基本だ。室内では内蔵フラッシュで撮影するよりも綺麗に写るので、オススメである。
撮影テクニック−前景と背景を選ぶ編


写真家の写真は、計算の上で成り立っている。絞り、シャッタースピード、構図、カメラアングル、使用するレンズ、カメラ、フィルムなどなど。デジカメではフィルムは関係ないが、すべて計算なのである。

予想外の傑作写真も、たまには撮れたりするが、たいていの場合は結果まで計算して撮影している。写真撮影は、まさに職人の世界なのである。

なんで、こんな話をしたかというと、考えて撮れば、どんな人でも良い写真が撮れるようになると思ったからだ。

「はてさて、良い写真を撮るには、ワタクシ、いったい何を考えて撮ればいいのでしょうか? いきなり問題提起されても、まったくワカリマセンです、はい」

という人に、ちょっとしたヒントを差し上げましょう。

新聞には、季節感のある写真がよく載っているのにお気づきだろうか。ふだん、何気なく見ている新聞に、写真上達へのヒントが隠されているのである。

報道カメラマンの写真は、ある種、独特で説明的なものが多い。文章量の多い新聞紙面では写真を載せるスペースが限られているので、基本的に1枚の写真で読者に分かってもらわなければイケナイからだ。

写真を2枚使ってもいいのだが、その場合は写真を小さくするか、文章量を減らさなければならない。1枚しか写真を載せられない状況が、そこある。

では、報道カメラマンはどう撮っているのか。

主役になるべき被写体と、準主役になるべき被写体とを、絶妙なカメラアングルで一緒に撮影してしまうのである。手前に伝えたいモノが写っていて、その後ろに人が微妙にボケて写っていたりすると、見る人に分かりやすい。「詳しいことは記事を読んでね」みたいな撮り方をするわけだ。

いろいろな記事が載っている新聞の中で、瞬時に読者の注意を引ける写真が良い。写真だけで全てを語らない撮り方が、報道写真独特の撮影方法。記事あっての写真、写真あっての記事なのである。

「では、みなさんは撮影するときに、前景と背景とのバランスを少しでも考えて撮影していますか?」

今、一瞬でも「えっ」と思った人は、今度写真を撮る時に前景・背景を考えてから撮影してみてほしい。それだけで、不思議と雰囲気のある写真が撮れるはずだ。でも、決して不思議じゃない。だって、考えて撮影したのだから、結果がついてくるのは当然のことなのだ。

今まで“撮りたい”と思ったモノしか見えていなかったのが、その周囲にも目をやるようになる。この辺りの心境の変化が、写真上達への大きな1歩と言える。

ただし、何でもかんでも組み合わせようとするとゴチャゴチャした説明写真になってしまうし、大事な大事なシャッターチャンスを逃しかねないので、くれぐれも考えすぎには注意しよう。

それから、ブツ撮りする時のアドバイス。

撮影したいモノに合わせた背景(紙や布など)を選ぶだけで、写真の雰囲気が変わる。前景と背景とのバランス(大きさや色、重なり具合など)を考えて撮影してみよう。

また、ライティングがよくワカラナイという人には、窓際に置いて撮影することをお勧めする。内蔵フラッシュで撮影するよりも、結構、イイ感じで撮影できる。窓際に置いたことによって撮りたいモノが暗くなるようなら、カメラ側に画用紙や銀紙などを用意し、光を反射させて被写体に当ててみよう。これだけで、立派なライティングになるはずだ。

写真家は常に考えている。人に何を伝えたいのか、いかに“説明的”でなく“芸術的”に被写体を捉えるかを……。


by 清水哲朗

つづく

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