僕のデジカメ撮影法は、銀塩カメラのテクニックをそのまま応用している。これは、「デジカメ」だからできないとか、「フルオート撮影」だからできないという既成概念から、なるべく離れるためでもある。今回は「なんちゃってテク」ではない本物のテクニック、銀塩カメラでも一度はやってもらいたい「流し撮り」をレクチャーしよう。





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まだ、デジカメを手にして間もない頃、多摩動物公園でヨシダを撮影しているとき、あることに気がついた。いつものように撮った写真を確認していると、背景は止まって写っているのに、ヨシダがブレている写真があった。「あれっ。もしかしたらデジカメでも流し撮りができるかな」と。しかし、その場で試してみたが、なかなか納得いくモノは撮れなかった。



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流し撮りは、こんな風にも考えられる。「動いているモノに合わせて自分が動いたら、同じように撮れるのではないか」。で、実際に撮ってみたのが、この写真。車窓越しの撮影だが、結果から判断すると、最初の考えは正しかったようである。写真撮影で「できるかな?」と思ったことは、何でも自分自身でやってみるといい。「できるかな?」と思っても、テクニックを覚え、条件さえクリアすれば、撮影できるモノは意外と多いのである。



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だからといって、車窓からの風景がすべて流れて撮れるわけでもない。このように、しっかりと写すこともできる。「なぜ、ブレずに、しっかりと写っているのだろうか?」。日中の撮影でシャッタースピードが速いというのもあるが、遠くの風景の方が手前の風景より目で見える移動距離が少ないため、ブレにくいのだろう。この写真もよく見ると、手前の木々がブレて写っている。2枚目の写真の背景を見ると、そんな違いが分かったりもする。



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ようやくイメージに近いモノが撮れた。手前と背景が流れて、撮りたいものにピントを合わせた写真だ。こんな風にイメージ通りの写真を撮ろうとすると、フルオート撮影では難しい。何枚も撮って、ようやく撮れるか撮れないかというところだ。専門的な撮影方法になると、やはり、絞りだとか、シャッタースピードを自分でコントロールできるカメラが必要になるし、その方が実際は楽に撮影できるのである。



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入線してくる電車をカメラで追いかけて、シャッターを切る。「流し撮り」は「追い写し」とも呼ばれている。被写体の動きに合わせて撮影するのが、一般的な「流し撮り」の撮影方法。練習しないと、なかなかうまく撮れない。写真学校では、軸となる“腰の回転”が大切と習った。運動会からF1撮影に至るまで、いろいろな動きが表現できるので、是非マスターしたいテクニックの1つだ。
撮影テクニック−流し撮り編


「なんかさぁ、バイク雑誌でさぁ、コーナーリングでバイクが止まって写っているのにさぁ、背景がさぁ、流れて写っている写真見たんだけどさぁ、あれってさぁ、なんかさぁ、撮り方あんの?」

と、高校時代の友人に“あんたがった、どこさぁ”調で聞かれたことがある。

「あぁ、あれ? 撮り方あるよ! バイクの動きに合わせて撮影すればイイだけ〜」

と、僕は簡単に答えてしまった。でも、それは雑誌で読んだ知識であって、まだ実際に撮影したことはなかった。

高校卒業後、写真学校に入り、先生の指導のもとで「流し撮り」に挑戦してみると、これがかなり難しいテクニックだということが分かった。シャッターを押すタイミングが難しいのだ。画面に入ったときにピントを合わせ、シャッターを押しながらカメラを横に振っても、なかなか思うようにならなかった。

撮影中にも手応えはなかったが、帰宅してから恐る恐る現像してみると、やはり、ほとんどが画面からはみ出たり、写っていなかったり、散々な結果であった。撮影中の手応えというのは、ちゃんと結果に出るものである。高校時代の友人に「流し撮り」のことを軽く答えてしまったことを後悔した。

それから、時は過ぎ、時代は21世紀に入った。「IT革命」などと言われ、カメラ業界にもデジタル化の波は押し寄せてきた。アナログ人間だった僕も、この連載のために、突如、デジカメなるものを渡されてしまった。でも、当時はまだ、デジカメで「流し撮り」をしようなどとは考えてもいなかったのである。

「流し撮り」を知らない方のために、ここでちょっと説明。

「流し撮り」というのは、動いている被写体をいかに躍動感あふれる写真に写すかというテクニックで、スポーツ写真を撮るカメラマンがよく使う。身近なところでは、子供の運動会や犬が走っている様子などを捉えると、雰囲気が伝わる写真になる。

撮り方としては、シャッターを押しながら、被写体の動きに合わせてカメラを振るだけである。注意点としては、あらかじめピントを合わせておくこと。被写体が画面からはみ出ないように(自分のイメージ通りに画面に入れたまま)撮るのが、上手に写すコツである。カメラを被写体の動きに合わせて動かすので、被写体以外は流れて(ブレて)写る。

普段、僕はあまり「流し撮り」はやらない。何かきっかけがないと使わないテクニックなのである。そんな僕が、なぜデジカメで「流し撮り」をやろうと思ったのか。きっかけは、多摩動物公園で写した1枚の写真だった。

当時はまだ、デジカメを使い始めたばかりだったので、日中は普通に撮影していた。しかし、辺りが暗くなり始めた頃、偶然、デジカメでも「流し撮り」ができるのではないかという可能性を感じさせる写真が撮れたのである。撮影直後に画面で確認すると、動物はブレているのに、背景は止って写っていた。

「おっ、これはもしかすると!」

写真自体は失敗作だったが、この写真がスローシャッターで写されたものであることを教えてくれていた。

「シャッターがスローになっているなら、流し撮りができるではないか!」

「流し撮り」はスローシャッターで撮るのが基本だ。銀塩カメラの場合、1/15秒から1/60秒ぐらいで撮ると、それっぽく写る。F1などのモータースポーツは、被写体の動きが速いので、もっと速いシャッタースピードで撮ることもある。

要は、被写体がどのくらいの速さで動き、背景をどのくらい流して写したいかである。シャッタースピードが遅くなるほど、背景は流れる。でも、問題はデジカメをフルオート撮影しているところにある。シャッタースピードも、ピントも自分で合わせることができないのだ。

「さてさて、どうやって流し撮りをするかな? う〜ん」

まぁ、こういうときは悩んでいても仕方がない。実際に写真を撮ってみれば、あとは撮影結果が「どうすればいいか」教えてくれる。とにかく撮ればいい。

「よし来たっ! ん? あれあれっ? なんだ? 違うなぁ。う〜ん。それっ! う〜ん」

さすがに上級テク。なかなか上手に撮れない。しかも、相手は動物ときている。こちらの思うようには動いてくれず、この日は閉園時間を迎えてしまった。

この日から、僕の「流し撮り」の挑戦が始まった。「流し撮り」に適した条件のときは、なるべく撮るようにしてみたのである。

「よし来たっ! おっ、いいねぇ。ほれっ、それっ! うんうん」

何でもそうだが、練習すれば上達する。写真も同じく、撮れば撮るほどコツがつかめて、無駄な写真を撮らなくなる。僕は、「流し撮り」の撮影方法も、いろいろ試してみた。

被写体の動きに合わせてカメラを動かすのではなく、自分が一緒に動いてしまえば、わざわざカメラを横に振る必要はない。これなら、画面からはみ出たり、シャッタースピードを考えずに撮影できる。

例えば、2台の車で並走しながら撮影すれば周りは流れ、動きのある「流し撮り」になるではないか。ただし、自分が運転していない場合に限るが……。

これは、まさに“なんちゃってテク”。 でも結果は「流し撮り」。うまく見えるなら、これもアリでしょ?

写真を撮るには柔軟な考え方が必要である。自分のデジカメに欲しい機能が付いていなければ、自分がそれに合わせて進化したり、考えれて撮影すればいい。要は、楽しみながら写真を撮影することが大切。上手下手よりも、いかに写真を撮る行為を楽しんでいるかである。

なんだかんだで、突如、持たされたデジカメだが、写真を撮ることに違いはなく、僕は結構楽しんでいたりするのである。


by 清水哲朗

つづく

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