
[写真クリックで拡大] |
| 青空が広がる草原にゲル3つ。誰もがイメージするモンゴルの風景だ。 |

[写真クリックで拡大] |
| 舗装されてはいないが、きれいなザム(道)。こんな道ばっかじゃないんだけどね。 |
|
|
 |
| モンゴルの首都ウランバートルから、南に向かう。 |
|
第3話 「おいで、おいで」
ザムを走っていると、遊牧民の暮らすゲルの近くを通ることがある。ゲルに近づくと中から遊牧民があわてて出てきて、こちらに向かって「来て、来て」と手を振っているのが見えた。
「何かあったんじゃないの?」
と運転手に聞くと、
「別に何もない」
と勢いよく通り過ぎてしまった。しばらくして別のゲルの近くを通った時も、遊牧民があわてて出てきて手を振っている。気になった僕は、運転手に車を近づけるように指示する。
遊牧民に、
「サェンバェノー、サイハンゾスッチィノー(こんにちは、良い夏をお過ごしですか?)」
と軽くあいさつ。むこうもあいさつしてきて、
「まぁ、お茶でも飲んでいきませんか?」
と特にあわてた様子もない。「あれっ? おかしいな」と思いながらも、デコボコ道にちょっと疲れていたので、ゲルの中でお茶をごちそうになることにした。
スーテーツァイ(乳茶)を飲みながら、「どこから来たのか、どこへ行くのか、結婚してるのか、家族は何人だ」など遊牧民と、しばし雑談。
和やかな雰囲気で話が進んでいくと、「小麦粉がないんだけど持ってないか。あれば、売ってくれないか。街に行くなら乗せてってくれないか。アイラグ(馬乳酒)を買わないか」などといろいろ要求してきた。
「ん!?」
と何かに気づいた僕。ゲルの外にあわてて出てきて手を振っていたのは、日本の海の家でも見かける「おいで、おいで」のジェスチャーだったのだ。
ゲルの近くを通る車は、良い商売相手なのである。それを知らなかった僕は、まんまと引っ掛かって近づいてしまった。
「やられた、それが狙いだったか」
とその時、ようやく気づいたが時すでに遅し。「お茶もごちそうになったし、どうしようかな」と考えていると、運転手が、
「食料の余分はないし、街にもしばらく戻らない。座る席もない」
ときっぱり断ってくれた。頼もしい人を雇ったものだと思ったのもつかの間、
「でも、アイラグは買おう」
とまんまと10リットルも買ってしまい、嬉しそうな酒飲みの顔を浮かべる運転手であった。
運転手にまさかの二連敗。
|