【モンゴル放浪メモ】               ◆モンゴル家畜講座
遊牧民は、俗に『五畜』と呼ばれる5種類の家畜(ウマ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ラクダ)を飼って生活している。といっても、5種類全てを飼っている家は少なく、暮らしている場所や環境に合った家畜を2〜3種類飼っているのが普通だ。今回来ているゴビでは、ラクダ、ヤギ、ヒツジ、ウマがほとんどで、ウシはほとんど見かけなかった。五畜のほか、ブタやヤクなどを飼育している遊牧民もいる。




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ラクダの顔が面白いので、撮影したくなった。気づいたときには、17mmの超広角レンズを使って間近で劇画っぽく撮っていた。




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子ラクダにミルクをやる母ラクダ(これは、春先にモンゴルを訪れたときに撮った写真)。夏毛とは違い、冬毛のラクダはカッコイイ。



モンゴル国土の南部に位置するゴビ砂漠
第6話   やるのか、テメー


砂漠はかなり、危険地帯であった。

カラダに触れられただけでカイカイになってしまう白アブの攻撃や、巨大ダニの襲来。今回、被害には遭わなかったが、サソリや毒グモも生息しているらしい。植物もトゲトゲしく、危険な匂いをプンプンさせている。

ここほど、「明日は我が身」というコトワザが似合うところはないのではなかろうか。

恵みの太陽も、ここでは危険な存在である。じりじりと肌を焼く激しい暑さ、地面からの照りつけ。卵があったら、車の屋根ではもちろんのこと、地面に置いただけでも目玉焼きができるんじゃないかと思えるほど砂も熱い。

常にのどの渇きが襲ってくる。ジッとしていても、カラダの中の水分が全て奪われてしまいそうな感覚を覚える。この強い日差しを逃れる場所もないので、半ば意識が朦朧(もうろう)として危険な状態になってくる。あとは精神的に打ち勝たないとヤバイ。

「もう、いいや。どうにでもなってしまえ」と思ってしまったら最後だ。希望を持ってあきらめずに自分を信じるしかない。だいいち、こんな所で死んでも誰も気づかないだろう。当然のことながら、この近辺に遊牧民のゲルは見当たらなかった。

僕も運転手も口数が少なくなってきたので、砂漠をあとにすることにした。アメリカ製のGPSを使うが、砂漠の中では方向もよく分からないうえ、砂も深いので思いどおりに進まない。何度も砂にはまりスタックしてしまったので、この砂山地獄から抜け出すのに何時間もかかってしまった。

遠くでは苦戦の僕らにはおかまいなしに、ラクダが2頭、ひょうひょうと歩いていた。

「つっきのぉ〜砂漠うぉ〜」

と酔っぱらいが歌いたくなる気持ちが分かるほど、砂漠にはラクダがよく似合う。モンゴルのラクダはフタコブラクダで、頭は良いが自分勝手な行動をする家畜だと遊牧民が言っていた。

ここへ来るまで、ラクダなんてマジマジと見たことはなかったが、近くで見ると結構ひょうきんな顔をしている。おまけに、ラクダはモンゴル語で『テメー』というから笑えるが、たえずクチャクチャと反芻している口が生意気そうに見えるのでムカついてくる。

『テメー』とは誰が付けたのか知らないが、日本人からしたら、

「やるのか、てめぇ。かかってこい、こんにゃろう」

とケンカを売りたくなってしまうような名前だ。興味を持った僕は、ラクダに乗って旅に行きたい気持ちでいっぱいになった。


by 清水哲朗

つづく



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