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| ユキヒョウ探しの取材についてきてしまったドルジさんの飼い犬、マーテ。まだ幼く、人なつっこい。 |
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| 山中で見かけたアルガリ(オオツノヒツジ)2頭。この辺りの動物は岩と保護色になっているので、見つけるのが難しい。 |
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| ドルジさんと岩の斜面を登っている途中、手をついた先にヘビがいた。びっくりして後ろ向きでジャンプしてしまった。その後、ヘビに息を吹きかけて、舌を出させ怒らせながら撮影した。 |
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第10話 星降る夜の野ウンチ
それは未明の出来事だった。いつものように、テントの中で寝袋にくるまって眠っていると、突如腹に「ぎゅるるるる」と痛みが走った。
「う〜ん。なんだよ」
腹をさすり、身体を丸めた。なんか悪いもの食べたかなぁ。寝ぼけながら昨晩、何を食べたか思い出してみる。
「う〜ん。何だったっけ。乳製品だったかなぁ。てんで思い出せないや。まぁ、どうでもいいか。寝ちまおう」
夏とはいえ、山中はかなり冷え込んでいるので、できることなら朝まで寝袋から出たくない。だいいち起きるのが面倒だ。今は腹の痛みより睡魔が勝っていると判断した僕は、再び寝ることにする。Zzz…。
30分ぐらい眠ったところで、痛みの太鼓が鳴り始めた。「ずんどこ、ずんどこ、ずんどこどん。俺たちゃ、腹の痛みです。ずんどこどん」
「おっぷぅ」
身震いしながら目覚める。こんな時は外に出て痛みのもとを放出しちゃえば天国なのだろうが、意地でも起きたくない。寝袋から出る方が地獄だ。
「ぴ〜ひゃららっ、ぴ〜ひゃららっ」
「ソイヤッ、ソイヤッ、ソレッ、ソレッ」
笛の音に神輿まで現れ、腹の中のお祭りは最高潮である。丸めた身体が思わずまっすぐになる。もう駄目だ。
「我慢の限界っ!」
寝袋をすばやく抜け出し、パンツのままヘッドライトを持って外へ出る。辺りは真っ暗闇だが、今夜も夜空は満天の星に埋め尽くされているようだ。しかし、僕には星空を見上げる余裕もなく、テントから少し離れたところまで小走りで行き、しゃがみこむ。
「おうぅっ」
半分白目になりながら一気に脱力。
「来てよかった」
でも、なんとなく痛みが残っているので、全部出し切ろうと腹をもむ。すると、遠くで岩が転がる音がした。
「なんだろう」
しゃがんだまま、ヘッドライトで半円を描くように辺りを照らす。
「あれっ」
一瞬、緑色の眼が光ったような気がする。動物かな。そういえば、遊牧民がここら辺にはユキヒョウだけでなくオオカミもいるよ、なんて言っていたかもしれない。
「えっ、オオカミ!?」
もう一度、ヘッドライトを照らす。
「んっ!!」
間違いなく人間でない何かがこちらを見ている。しかも、そいつは様子を窺いながらゆっくりと近づいてくるではないか。サァーっと血の気が引いていくのが分かる。
「ドルジさ〜ん」
と呼ぼうとしたが恐怖のあまり声が出ず、口をパクパクしてしまう。
緑色の眼が猛ダッシュでこちらに向かってきた。そいつの荒い息づかいが聞こえる。
「ハァ、ハァ、ハァ」
「やばい。やられちまうよ」
パンツを必死に上げようとするが、あわてているので途中で引っかかってしまい、半ケツ状態に。しかもケツを拭いていない。だが、みっともないとか、汚いとか言っている場合ではない。仕方がないので、しゃがんだまま逃げようとする。そいつの足音と息づかいが限界まで近づいた。心臓がバクバクして息苦しい。
「もう駄目だ。襲われる。僕はこの地でケツを出して死んでいくのか。情けない最期だ」
目をつむり覚悟したとき、何かが僕の腕をペロペロなめ始めた。恐る恐る目を開けると、そいつはシッポをふっている。ヘッドライトを当ててよく見てみると、ドルジさんの飼い犬マーテだった。
「やめてくれよ。まったく」
この地で怖いものはオバケではなく、オオカミだと感じた出来事だった。
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