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| 朝、目覚めると、テントの外は霧に包まれて視界ゼロであった。そんななか、ドルジ仙人は夜中のうちにいなくなってしまったラクダを探しに行き、戻ってくることができた。 |

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| ユキヒョウ捜索を終え、ゲルに戻ってくると大変なことになっていた。昨晩、ユキヒョウが現れ、ドルジ家のメスヤギを襲ったというのだ。メスヤギは無惨にも肉が露出し、血だらけになっていた。 |

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| メスヤギの顔を見ると、涙を流していた。どうにも痛いらしく、座ることもできないようだ。九死に一生で救われるよりも、食われてしまった方が幸せだったかもしれない。このメスヤギには子が1匹いた。 |

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| ドルジ仙人一家と記念撮影をする。5歳年上の奥さんと2人の子供。奥さんとの間に子供はできなかったらしく、息子は奥さんの連れ子、娘は養子と聞いた。複雑な家族構成だが、仲良く暮らしている。この旅で、一番お世話になった家族である。 |
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第14話 ユキヒョウが現れた!
早朝いつものように起床し、目覚めのお茶を飲む。今日で最後かと思うとちょっぴり淋しい。
昨晩は、いろいろな思いが巡り、あまり眠れなかった。ドルジ仙人は僕の顔を見て、
「悲しいですか」
と、ぼそっと言った。僕は少し考えた後、小さくうなずき遠くを見つめた。
「シミズ。ユキヒョウに出逢うことができないのは、自分のせいだ。ごめんなさい」
とドルジ仙人は言った。
「ううん。あなたのせいではないよ。大丈夫、気にしないで。今日は逢えるよ。さぁ、探しに行こう」
ドルジ仙人は初めて出会った自分のために、どうしてそんなに一生懸命になってくれるのだろうか。そんなことを考えながら、しばらく山を登った。
夜明けが近づいてきた。山々の遙か向こうの空がグラデーションに染まっている。日の出前の、この時間は刻一刻と空の表情が変化するので見ていて飽きない。自然の美しさを実感できる瞬間だ。思わず撮影してしまう。そういえば、久々に綺麗な朝焼けを見た気がする。ドルジ仙人は僕に付き合い、少しだけ朝焼けを見ると行ってしまった。
「いけない、いけない。そうだ。僕はユキヒョウを探しに来ているんだ」
あわてて追いかける。
ドルジ仙人と僕は、それぞれ方向を決めて山頂から双眼鏡でユキヒョウを探す。僕の方にヤンギルが数頭いたが、今日はそれが目当てではないので撮影しない。
「ヤンギル(他の動物)がいる方向にはユキヒョウはいない。なぜなら、ユキヒョウから逃れて今のところにいるのだから。ユキヒョウを探すときはカラスを探せ。カラスはユキヒョウの食べ残した獲物を食べるんだ。オオカミを探す時も同じだ」
以前、ドルジ仙人にそう教わった。その仙人が双眼鏡を覗きながら僕に合図した。
「どうしたんですか。何かいましたか」
ドルジ仙人は押し殺した声で、
「ユキヒョウだ。あそこにユキヒョウがいる」
「ええっ。どこに」
僕は震え上がった。
「あそこ。大きなユキヒョウが3頭いる」
「ええっ。どこ」
「あそこ。遊んでいる。見えないのか」
「……………」
「あそこ」
「えっ。どこに。全然わからない」
「……………。行ってしまった。見えたか」
「見えなかった」
「もう少し近くへ行こう」
仙人は風向きを確認すると物凄い勢いで崖を下っていった。機材を持っている僕も、負けずに駆け下りる。
「なんで。なんで僕には見えなかったんだ」
10分ぐらい走ってようやくついた頃には、そこには何もいなくなっていた。気配すら感じられない。
ドルジ仙人は、辺りを見回したが、首を横に振っている。
「なんで僕には見えなかったんだ。3頭もいたんだぞ。どうして………。せっかくドルジ仙人が見つけてくれたのに、何をやってるんだ」
ドルジ仙人がユキヒョウがいたと言ったところには、確かに3頭分の足跡が残っていた。周辺を探し回ったが、結局、その後なにも現れることはなかった。
昼過ぎ、僕らはベースキャンプを撤収し、ゲルへ戻ることに。帰りのラクダでの道のりは、僕にはとても寒く、長く感じられた。
夕方、最後の丘を越えてゲルが見えた時、僕らを見つけたドルジ仙人の家族や運転手がこちらを見てみんな大騒ぎしている。
「すごい大歓迎だね。久々に帰ってきたからね」
と思っていたら、実はそうではなかった。どうやら大変なことが起きたらしい。
よく聞くと、昨夜未明、ゲルの裏ににユキヒョウが現れて家畜を襲ったと言っているではないか。メスヤギが1頭襲われたらしく、そいつは瀕死の状態で立っていた。座ることもできないらしい。
僕らは疲れていたが、休むどころではなかった。
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