【モンゴル放浪メモ】              ◆必携アイテム
僕にとって「爪切り」「耳かき」「アカスリ」は、放浪に欠かせないアイテムだ。なんてことない日用品なのだが、これらがないと旅を楽しむことができない。まずは爪切り。伸びているのに切れないとは何事かと思ってしまう。そして、耳かき。埃っぽいモンゴルでは、鼻も耳もすぐ汚れてしまう。鼻はティッシュで「チーン」すればスッキリするが、耳はそうもいかない。前に忘れてしまったときは、「痒いのにかけないとは一体なんなんだぁ」と荒れ狂った。落ちていた枝を半日かけてナイフで削って作ってみたが、スプーンのところがうまくいかず、耳かきしている途中で折れてしまった。それからは、必ず持っていくことにしている。綿付きがオススメだ。最後にアカスリ。出番は数少ないが、風呂に入ったときにゴシゴシと洗い流せるのが、たまらなく気持ちよい。旅の垢は旅先で落とすのが、礼儀。





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夕焼け後から星空を撮影。ほぼ毎日見ていただけに、この日で最後かと思うと淋しくなってしまった。夜が来ると人は悲しくなるらしい。



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テントの中でラクダのことを思い出した。愛嬌のある家畜だったが、わがままやりたい放題なのにはマイッタ!



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お茶目なドルジ仙人のことは、忘れることができない。レンズを交換しようとしたとき、見せてくれと言って覗き込んでいた。



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道の途中にあったオボー。旅の安全を祈願するところだが、標識代わりにもなっている。小石を投げ入れながら、この石山を3周すると祈願できる。急いでいるときは、クラクションを鳴らすだけで通過する運転手もいる。石だけでなく、松葉杖や動物の骨、瓶などが積まれているオボーもある。
第19話 目指すはウランバートル


寝袋に入ったものの、なかなか寝つけない。ウランバートルへ戻れるという喜びで興奮していたせいもあったが、まぶたを閉じると、これまでの旅が浮かんできた。

プルゴンでの旅、砂漠で虫の襲撃にあったこと、ドルジ仙人との出会い、ラクダに乗ったこと、ユキヒョウ捜索、夜中のトイレ、プルゴン故障……。

軟弱な僕には、すべての出来事が刺激的であり、衝撃的だった。自分の無力さを知った旅でもあったが、どの出来事も今ではいい思い出になったし、いい経験になった。いくつかの遊牧民の家庭でお世話になり、遊牧生活を実感できたことも貴重な体験で忘れられない。明日で終わりかと思うと、やっぱり淋しいものがある。

「日本に帰りたくない……」

テントの中から空を見上げると、あまりに綺麗な星空であったが、今夜ばかりは悲しく見えた。

翌朝は、日の出前に目が覚めた。外に出ると運転手はすでに起きていて、ポリタンクの水で車を掃除していた。

「おはよう。今日、ウランバートルだからねぇ」

嬉しそうな笑顔で話し掛けてきた。掃除しても、途中の砂埃でまた汚れてしまうだろうにと思ったが、何も言わなかった。運転手こそ、ウランバートルに戻れるのを誰よりも喜んでいるのだ。

モンゴル人にとって、ウランバートルとは特別な街なのだろう。遊牧民がウランバートルへ行くときは、男性も女性もとびきりのオシャレをしていく。帽子も靴もデール(民族衣装)もみんな新品か、新しそうなものを着る。特に女性は、気合いの入れようが違う。何度も鏡を見ながら服を考えているし、化粧だってバッチリしていく。

「厚く塗りすぎじゃないの。まぶたの上って、そんなに塗らないもんじゃない?」

って言いたくなるような人もいる。まぁ、余計なお世話か。アクセサリーだって自分の持っているものをすべて身に着けていくから驚きだ。そういう人にウランバートルで出会うと、すぐ分かるから面白い。

「さぁ〜て、僕は何を綺麗にしていこうかな。とりあえず、久々に頭でも洗うか。シャツも取り替えよう」

誰もが嬉しくなる街、ウランバートル。すべての物が揃う街。ウランバートルを出たことがない人には、この喜びはわからないであろう。でも僕は、ゴビへと出発する前に、車の排気ガスと人ごみに嫌気が差していたと言ってた気がする……。まぁ、小さなことは気にしない、気にしない。それが、大陸的なモノの考え方。

さぁ、出発しよう。目指すはウランバートル、残り数百キロだ。


by 清水哲朗

つづく



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