中国・北京から国際列車に1日半揺られて、モンゴル・ウランバートルへ再びやってきた。列車から降りたときは、そんなに寒く感じなかった。迎えにきてくれたモンゴル人の友人に「暖かいねぇ。今日の気温は何度?」と聞いたら、「−30度」とのこと。「あれっ」と思ったが、今回の取材用に購入した「極寒仕様」のアンダーウェアの威力はなかなかのものだった。





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田舎には、やはり雪があった。モンゴルの平原が雪に覆われると綺麗である。しかし、実際、雪は1カ月に何回かしか降らず、汚い雪景色が多かったりする。この時は、前日に雪が降ったのでとても綺麗だった。雲のカタチが素晴らしい。


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ゴビには雪がまったくなかった。いつもと違うのは「気温が低い」というだけで、僕の知っているゴビであった。「同じ国でこんなにも違うのか」と思ってしまうぐらい、北と南では景色が違う。


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ドルジ仙人との再会。ドルジ仙人のゲルを目指して車で走っていたが、日没後、道に迷ってしまい(ザムの二股道を違うほうへ行ってしまった)、仙人のゲルに着いたのは、深夜1時過ぎであった。連絡しなかったせいもあったが、非常に驚いていた。それでも、仙人は温かく僕らを歓迎してくれた。この写真は、ラクダに乗って3日間だけ山に入った時に撮影した。


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お正月の特別料理ボーズ。日本人がお正月に餅を食べるように、モンゴル人はずっとボーズを食べる。作る数やカタチは各ゲルによって違うが、多いところでは1000個以上も作るとか。今年のモンゴルのツァガーン・サル(直訳すると「白い月」だが、お正月のことをいう)は2月24日だった。旧暦でいくと1月24日のはずなのだが、占いする人が2月のほうが良いと言った(らしい)ので、2月24日になったそうだ。そのあたりが、いかにもモンゴルっぽい気がする。
プロローグ


「あっ、そうだ。冬のモンゴルへ行こう」

ふと、思いついた。でも、冬のモンゴルってどんなだ?

今まで僕は、夏のモンゴルへは幾度も足を運んでいたが、冬のモンゴルへは一度も行ったことがなく、まったく想像がつかない。ただ、友人から冬のモンゴルは「半端なく寒い」というのは聞いたことがあった。

「さて、どうするか。何をしなきゃいけないんだ?」

まずは本を見て、ちょっぴり情報収集。

「えっと、モンゴルの冬の気温は、っと。ん!! −40度にもなるって。なんだそりゃ」

横浜で生まれ育った僕に、氷点下何十度の世界はまるで想像できない。冬の北海道へは行ったことがあるが、それでも−20度ぐらいだった。

「今すぐに現金で1兆円あげるよ」

と言われるのと同じぐらい、感覚がつかめない。まぁ、1億円でもわからないのだけど……。

「う〜ん。そっか。とりあえず−40度ということは、単純に北海道の2倍寒いと考えれば良いのか? 違うかな。僕はテントで眠れるのかなぁ」

そのころ、新聞には「モンゴル、世紀の大寒波。何十万頭もの家畜が死亡」などの記事が載っていた。どうやら−40度というのは、ただごとではないらしい。家畜が立ったまま死んでいるという情報も耳にした。ロシアでは−60度を記録し、家の中にいても凍傷になる人がいるというニュースも聞いた。

「これは、相当ヤバイかもしれない。モンゴルはシベリア寒気団の影響をもろに受けるからな。日本でも雪がたくさん降ったし、侮れないぞ。そういえば、ドルジ仙人のところは大丈夫なのかな」

まずは、防寒具を揃えることから始めてみた。都内の登山用品店へ行くと「自分の汗で発熱するアンダーウェア」というのが目に付いた。厚手のものや薄手のものなど、何種類か置いてある中に『極寒対応』って書かれているものがあった。

「う〜ん、『極寒対応』か。『寒さの極み』に対応できる下着なんて素晴らしいね。これで上から下まで揃えれば大丈夫でしょ」

単純な僕は、この発熱使用のアンダーシャツを上下2セット、靴下2セット、手袋、スラックス、目出帽(銀行強盗が被ってるようなマスク)を購入した。発熱使用ではないが、ダウンジャケットと防寒帽も購入。あとは普段から着ているタートルネック、セーター、フリースを着れば良いだろうと考えた。

家へ帰ると、親父が通販に電話していた。

「スイマセン。この南極観測隊が使っていると書かれているアンダーウェアを上下2セットください。なんだか冬のモンゴルへ、ウチの息子が行くって言っているもんで。出発までに届きますかねぇ」

「あぁ、余計なこと言ってるよ。恥ずかしいな。荷物が重くなっちゃいそうだな。でも、親の優しさに感謝しなきゃ。普通は行かせてくれないか、−40度の世界に」

というわけで、極寒仕様のアンダーシャツを合計4セット持っていくことになってしまった。

このほか、撮影機材(カメラ5台、レンズ8本、三脚2本、一脚1本)、フィルム140本、テントや寝袋などのキャンプ用品、モンゴル人へのお土産などを用意したら、荷物は総重量65キロになってしまった。

「今までで一番重くなっちゃったよ。どうするか。人力(僕一人)で運べるのかな」

結局、荷物削減のために、仕方なく極寒仕様の服を着たまま家を出ることになってしまった僕は、電車の中でジロジロ見られながら、空港へと向かうのであった。この先、どうなることやら。


by 清水哲朗

つづく


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