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丘の上から夜明けの景色を撮影しようとしたが、風速10メートルを超える北風が吹いていて、三脚を使用しても写真がブレる可能性があった。そこで、車を風除けにしたが、それでもカメラは揺れていたので、風が止む一瞬を待ってシャッターを切った。
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ウランバートルから西に100キロほど行ったところで、馬が息絶えていた。こんなに大きな馬が力尽きてしまうほど、モンゴルの冬は厳しいのである。今回の取材では、ゾドが恐ろしい天災であることを目の当たりにした。
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ウランバートルを出てから、干し草を山積みにしたトラックに何度も出会った。ゾドの被害にあっている町や村まで、救援用の草を届けに行くらしい。この車は北にあるフブスグル県まで行くと言っていた。
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昨年、ゾドの被害にあった家畜たちの墓場。ヤギ、馬、ヒツジ、牛などの骨が無数に転がっていた。悲惨な状況だと分かりつつも、骨フェチの僕は這いつくばって夢中でシャッターを押した。
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第2話 骨の山
雪が凍りつき、ザムはアイスバーンと化していた。運転手は「怖い、怖い」と言いながら、慎重にハンドルを握っている。今回は、バットスフという30歳ちょっとの若い運転手にお願いした。アイスバーンのところになると、運転手はトロトロ走るように心がけていたが、時折、後輪が流されていた。
驚いたことに、モンゴルで走っている車のほとんどがノーマルタイヤなのだ。スタッドレスタイヤも一応売っているらしいのだが、装着している車など見たことがない。それどころか、チェーンを巻いた車すら見たことがない。
モンゴルの「ないない」尽くしには、もう慣れているが、命に関わることだけは、どうにかしたいものである。怖い、怖い。
ウランバートルから西に100キロぐらい走ったところで、馬が息絶えていた。車を停めて見に行ってみると、まだ毛艶も良かったが、部分的に鳥に食べられた跡があった。死後、数日であろうか。
ヒツジやヤギばかりでなく、こんなに大きな馬も力尽きて死ぬのかと思うと、「ゾド(雪害)」の恐ろしさを感じる。しかしそれは、ほんの序章にすぎなかった。僕と運転手は、その後100キロほど、家畜が死に絶えている光景を見続けたのである。
ラクダは確認できなかったが、ヤギ、ヒツジ、馬、牛が多数死んでいた。モンゴルの五蓄のうち、4種類が犠牲になっているとは……。
日本の新聞やテレビでもゾドのニュースを伝えていたが、自分の目で確かめるまで、何十万頭もの家畜が死亡するというのが信じられなかった。しかし、実際目の当たりにしてみると、ゾドの猛威は凄まじく、言葉が出なかった。ドルジ仙人のところは大丈夫だろうか。
途中、死んだ家畜の毛皮を剥いでいる遊牧民の親子がいた。声をかけると、
「今年のゾドは昨年以上に悲惨だ。うちの家畜もずいぶんゾドの犠牲になった。せめてもの思いで、死んでしまった家畜の毛皮を剥いで売るのだが、今年は毛皮がたくさんあって、たいして高く売れないよ」
と言っていた。
「毛皮を剥いでいるところを写真に撮らせてくれませんか」
とお願いしたが、断られてしまった。撮られたくない理由は、いろいろあるのだろう。遊牧民の気持ちを逆なですることにもなりかねないので、僕らは、すぐその場を後にした。
家畜の死に絶えた光景と同様に、野良犬やハゲタカなどが死肉をガツガツと喰らっている光景も何度も見た。口やくちばしの周りを血で真っ赤に染めた奴らは、いつになく満足そうに見えた。奴らは、食べ物に不自由しなくなる「ゾド」に感謝しているのかもしれない。モンゴルには、食物連鎖や弱肉強食の世界が確かにある。
そういえば、僕がウランバートルに到着した2月上旬、ゾドの他にもうひとつ気になるニュースが報道されていた。それは、東にあるスフバートル県とドルノド県で、原因不明の伝染病により、家畜の牛が約100頭、野生動物のゼールが10数頭死んでいるというニュースだ。ゾドで壊滅的な状況なのに、さらに伝染病が追い打ちをかけたのでは、遊牧民もたまらないであろう。
悲惨な100キロを過ぎると、雪も少なくなってきた。これまでは海抜が少し高いところを走ってきたためか、雪も多かったようである。
ボーっと車窓を眺めていると、一瞬、地面から何か出ているのが見えた。
「あれっ」
と思い、車をバックしてもらった。
「ん?」
遠くでよく分からない。少し近づいてみると、僕は眼をキラキラさせてしまった。
「う〜ん! 骨じゃん。骨の山だよ。すごいねぇ」
運転手に無理やり同意を求める。そこは家畜の墓場のように骨がゴロゴロとしていた。骨フェチな僕には、たまらない場所である。
「おっ、雪の中からツノが出てるよ。これ、今年のゾドで犠牲になった家畜の骨かなぁ」
「たぶん、昨年のゾドで犠牲になった家畜の骨だと思うよ」
運転手が言った。
さっきまでゾドの凄さを目の当たりにして、なんとなく気落ちしていた僕だったが、骨を見てなんだか元気になってしまった。
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