●ゴミのポイ捨て
モンゴルでは、ゴミをその辺に捨ててしまう人が多いようだ。タバコ、マッチ、缶、瓶、乾電池、アメの包み紙、タイヤ、その他もろもろ。車での移動中によく見かけるのだが、ザムの近くにはゴミがたくさん落ちている。せっかくの緑の平原も、これでは台無しである。街の人だけではなく、驚いたことに遊牧民も意外と捨てている。アパートやゲルの中は綺麗に掃除していても、結局は見えないところへ捨てているだけなのだ。土地が広いので、気づきにくいのかもしれないが、“チリも積もれば……”である。何とかならないかと日々思っている。





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ボルガンの街もそうであったが、ここ、ハトガルでもハウス型に住んでいる人が多い。モンゴル北部ではゲルよりもハウスのほうが暮らしやすいのだろうか。







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人間なんて、大自然に比べると“ちっぽけ”である。フブスグル湖の大きさは想像以上であった。地図で確認しても、写真の部分は、ほんの“これっぽっち”なのだ。







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ヨーロッパの田舎を思わせる写真だが、ここもフブスグルである。モンゴルの北と南で、こんなにも風景が違うとは驚きである。







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フブスグル湖に浮かぶ大きな船。手前のボートと比べると、その大きさが分かる。これだけの船が進めるというのは、湖が相当深いということだ。でも、船をどこから、どうやって持ってきたのか、不思議。







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停泊中の船に乗ってみた。人数とお金があれば、動かしてもらえるそうだ。甲板や操舵室も思ったより綺麗であった。淡水の湖であるため、極端に錆びることはないのだろう。
大自然に感謝するも……


「す〜、は〜。……ふぅ〜」

目を閉じ深呼吸すると、すこぶる気持ちが良く、妙に心が安らいだ。水も緑もないゴビで夜明けを迎えた時とは明らかに違う感覚だ。

フブスグル湖畔でひとり静かに夜明けを迎えた僕は、“今、ここにいる喜び”を実感し、大自然に感謝した。ここには草花も、森も、湖もある。フブスグルには、ゴビではあまり感じられなかった“生命の潤い”があった。

テントに戻り、お湯を沸かしていると運転手が起きてきた。

「おはよう。昨日は良く眠れた? 朝、湖に写真を撮りに行ったのかい?」

バットスフは僕と目が合うと、いつも笑顔を浮かべる。

「おはよう。良く寝たよ、バットスフは? 朝の湖は良かったよ。素晴らしいネ。明日は一緒に行く?」

「ははは。今は、わからないな」

「そうだよね。朝、起きられないんだもんね! せっかくここまで来たのにモッタイナイなぁ。あれっ?」

ふとプルゴンの方に目をやると、脇にアルヒの瓶が捨ててあった。

「全部飲んじゃったの、アルヒ?」

「ん? ははははは」

モンゴル人の酒好きには、ほとほと困ってしまう。あればあっただけ……なのだ。出会った遊牧民へのお土産用に買っておいたタバコやアルヒも、気がつくとなくなってたりする。

あまりヒドイようなら隠しておかなければならないが、毎朝、数を確認するようなことはしたくない。やっぱり、目のつくところにそういうモノを積んでおくのがイケナイのだろうか。

だいたい、やったならやったで自分から言えばいいのに、素直じゃないのだ。だから、人に指摘されて謝ることになるんだよ、まったく。

(なんだ、なんだ。せっかく良い朝を迎えたのに、やけに愚痴っぽくなってしまったぞ)

「まぁ、いっか。さぁ〜て、今日はどこへ行こうかな?」

ユキヒョウ捜索と違い、今回は特に目的もない。時間はたっぷりあるのだ。

「そうだ」

コーヒーを飲みながら、ふと思いついた。

「フブスグル湖って1周できるのだろうか。この大きさを自分の目で確かめたいな。とりあえず、湖の西側に行ってみようかな」

フブスグル湖の最南端にいた僕らは、東回りか西回りか選べたのだが、最南端の西側に、ハトガルという街があったので、僕はそこを通るようバットスフに伝えた。

ハトガルは、キャンプしたところの対岸にあり、すぐに到着した。しかし、人も見かけなければ、店もない。一体、何があるのだろうか。とりあえず、湖沿いに北上した。

湖は、青、エメラルドグリーン、緑とはっきり色が分かれている。場所によって深さが違うのであろう。波も確認できた。

遠くに、手漕ぎボートに乗った人たちがいるのが見えた。

「えらく、ちっちゃい人間だなぁ。いや、違う違う。湖がデカ過ぎるんだ。どこまで行くのかな、あの人たちは」

さらに北上すると、大きな船が3艘停泊していた。

「おおっ。すげぇ、すげぇ。こんな大きな船が停泊できるのは海だよ。湖じゃないよ、これは。乗れるかな」

辺りに人がいないのを確認すると、バットスフは嬉しそうにその船に乗り、キャビンから甲板まで、あっちゃこっちゃ移動しては、下で見ている僕に手を振った。「1枚、写真を撮ってくれ」なんてせがんできて、すっかり興奮気味だ。

バットスフの笑顔につられて僕も乗船し、船内の写真を撮り始めた。数枚撮影したところで、ヒョイとオバちゃんが現れた。一体、どこから来たのだろうか?

「ダメダメ。もう写真はダメ。撮りたいなら5000トゥグリク(約5ドル)払いなさい」

「えっ、今、そんなに持ってないよ」

「お金は、どこにあるの?」

「車の中。後で持ってくるからさぁ」

そう言って撮影を続けようとすると、オバちゃんはカメラの前に立ちはだかった。顔つきは、明らかに怒っていた。いやはや、どこの国でもオバちゃんは怖い、怖い!

「モンゴルの有名な写真家集団の仲間です」と言っても、たぶん、この人には通用しないだろう。

「はい、はい、はい、はい」

プルゴンにお金を取りに戻ったものの、悔しかったので、「どうだ」とばかりにオバちゃんにお金を差し出した。オバちゃんは、つまらなそうな顔で受け取ると、金額を確認した。

夜明けの頃に抱いた、大自然への感謝の気持ちはどこへやら。結局は、僕がちっぽけな人間だということが、オバちゃんの前で露呈されただけであった。