【モンゴル放浪メモ】  モンゴルの物価
掲示板に、モンゴルの物価について質問があったので、僕が放浪していたときのメモをもとに、何がいくらだったか書いてみよう。ちなみに、1000Tg≒1US$である。 米1キロ:350Tg、小麦粉1キロ:350Tg、ジャガイモ1キロ:280Tg、塩1キロ:150Tg、砂糖1キロ:500Tg、パイナップル1コ:1200Tg、一番安いタバコ1箱:190Tg、アルヒ1本:1600Tg、マッチ1箱:10Tg、あめ1キロ:1600Tg、アイス1コ:100Tg、輸入ビール1缶:500Tg、ボーズ1コ:100Tg、スーテーツァイ1杯:50Tg、肉野菜ウドン1杯:800Tg、中国製カップラーメン:280Tg、バス乗車賃(近場):200Tg、ザハ入場料:50Tg、日本へハガキを送る切手代:400Tg、カラーネガフィルム1本:2000Tg……など。





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一向に進まぬ僕らを、嘲笑うかのように見ていた牛たち。「いいよなぁ、草を食むだけの奴らは……」なんて愚痴ってみたりして。














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フブスグル湖の東側から見る風景。辺りが開けていて、西側とはまた違う表情をしている。この川は、湖へと流れ込んでいる。














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白い砂浜のあるフブスグル湖畔。さっきまで降っていた雨は、うそのように晴れ上がった。やっぱり、青空だと気分が良い。














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透けるような黄色い川の水が湖へと流れ込んでいる。バットスフの話では、ここはちょうど川と湖がぶつかる場所であるため、魚影が濃いとか。














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草原の中にある小川にコウホネが咲いていた。腹ばいになって撮影していると、数頭のヤクが近づいて来た。自分の水のみ場を邪魔されたとでも思ったのだろうか。
フブスグル湖に散った夢


ハトガルに戻ると、カラマツ林の前に広がる丘に再びテントを張った。

「いやぁ、さっきは参ったねぇ。驚いたわ」

「そうだよシミズ、気をつけないと」

「はい。スンマセン」

開放的“旅ゴコロ”は、危険があることさえも忘れさせてしまう。気を引き締め直すような出来事も、時には必要である。なんて、何事も起こらなかったから言えるのだが……。

翌日は朝から激しい雨だった。潤いのあるところには、雨が降るものだ。ドルジさんのいるゴビでは、夜中に山頂で降られた雷雨以外、雨に降られた記憶がない。乾いた南の風景が、なんだか懐かしくなった。

軽く朝食を済ませると、今日は湖の東へ行くことをバットスフに伝えた。

「東側には何があるのかな? バットスフは行ったことある?」

「すぐそこまでなら。でも、しばらく湖の近くは走らないよ」

「あ、そう。でも、行ってみますかねぇ」

東側には道らしきものが全く見当たらないので、双眼鏡で道を探してみた。数キロ先にゲルが2軒あるのが見える。僕らは道を聞こうと思い、ゲルを目指した。

しかし、簡単には辿り着けなかった。体が前後に激しく揺れるような、“超デコボコ”の原っぱが僕らの前に立ちはだかり、“見えているのに近づけない”という、もどかしい状況がしばらく続いた。

「おいおい、バットスフ。こんなデコボコの土地で、あのゲルの人たちはどうやって暮らしているんだよぉ」

「俺にも分からない」

「もういいよ。ゲルに行くのはやめよう。きっと、どっかに道があるって」

これ以上進むと車が壊れる可能性がある。どうしても行かねばならぬ場所ではないから、ゲルに寄るのは、あきらめることにした。湖畔で草を食んでいる牛たちがこちらを見て、「さっきから何やってるんだ、あの車は」という顔をしていた。

「けっ。牛にまで馬鹿にされてるよ」

うねるデコボコをなんとか脱出すると、轍が現れた。轍は北へ向かってしっかりと続いている。そして、僕らが来た方角へも……。さっきまでのデコボコはいったい何だったのだろうか。

僕はほお杖をつき、放心状態で、ただただ車窓を眺めていた。はっきりしない天気の日は、なんとなく気分が重い。また雨が降り出してきたが、野花は嬉しそうに咲いていた。

そういえば、湖の西と東では花の咲き具合が違うようだ。昨日行った西側の野花はもう咲き終わっていたが、こちら側は今が見ごろである。同じような標高でも、開花時期が違うことがあるらしい。これは新しい発見だった。

黄色い川を越えたところで、雨はドシャ降りになった。車を停めさせ、バットスフと2人でボーっと雨がやむのを待った。対向からやって来たプルゴンが2台、僕らの横を通り過ぎていった。

「あの車は北の方から来たけど、どこから来たのかな?」

「あぁ、あれはロシアからだよ。ロシアでプルゴンを買って、自走してウランバートルまで行くんだ」

「へぇ〜。この車もそうだったの?」

「そうだよ」

遠くの空では、いつのまにか青空が顔を出している。

「降ってるのはここだけか。もうすぐ上がるね。ボチボチ行きますかねぇ」

この先の道は二股に分かれていた。

「シミズ、どっちに行く?」

「う〜ん。湖のほう」

困ったときは湖でも眺めれば、何かひらめくかもしれない。道は途中でなくなったが、プルゴンに乗ったまま湖畔に出ることができた。天気は驚くほどに回復し、青空と白い砂浜のコンビネーションがなんとも言えず美しい。

湖には、波が激しく打ち寄せていた。僕は裸足になり、砂の感触を確かめた。さらさらしていて、なかなか気持ちが良い。バットスフも真似して裸足になった。先ほどの黄色い川の水が、砂浜の脇の辺りから湖へと流れ込んでいた。

「ここは、魚釣りポイントだよ。川と湖がぶつかる場所だからね」

バットスフが言った。

「えっ、そうなの? 魚がいるんだ。サオ、車に積んでないの?」

「ないよ。残念だね」

「あ〜、魚が食べたかったなぁ! 失敗した〜」

いつも水とは縁のない乾燥地帯に行っていたから、サオを持って旅することを忘れていた。それに写真を撮ることばかり考えて、釣りをするなんて、まったく頭になかった。

「魚なんて、貴重なる食料ではないか。あ〜、釣りしたい! 釣りがしたいよぉ」

悔やんでも悔やみきれないが、ないものはないのである。いくら駄々をこねても、ダメなのだ。太公望の夢は儚くもフブスグル湖に散っていった。

釣竿がない以上、これより北へ進んでも仕方がない。それに撮影済みフィルムも約80本になってしまった。

ここは素晴らしい場所だけど、そろそろ違う楽園を目指しても良い時期かもしれない。我々はフブスグル湖1周の旅をここであきらめ、勇気ある撤退をしよう。よく頑張った。

そんな気分で、いつものキャンプ地に戻ることにした。そこにテントを張り、明日フブスグルを発つことをバットスフに伝えた。

未撮フィルム、残り100本。この先、どんな場所があるのか分からないが、ちょっぴり賭けに出てみた。