【モンゴル放浪メモ】  モンゴルの電話事情
田舎で電話をかけるときは、郵便局へ行き、相手先の電話番号を紙に記入して、交換につないでもらう。電話をつないでもらうと、なかば絶叫調で「ウランバートルの誰それへ電話をかける人、何番の電話機だよ!」と言われる。そして、通話後にお金を払うシステムになっている。通話時間を伝え、先にお金を払うところもあるが、時間がくるとプツリと切れてしまうので、あわてて話をしなければならない。ドルジさんのいる村で電話をかけた時は、相手の声が遠くてほとんど聞こえなかった。まったく会話にならず、友人には用件を伝えるだけの一方通行の電話であった。





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土手にびっしりと作られたツバメのマンション。各穴には雛がいて、親鳥が餌を運んでくるのを待っていた。僕が近づくと、親鳥は雛に危険を知らせる警告音を出した。





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草むらの中にエーデルワイスを見つけた。小学校の時に唄ったのを思い出したが、最初の部分しか歌詞が浮かんでこなかった。





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山腹に何種類もの花が咲いていた。フブスグルで見た花とは、ちょっと違っていた。6月から7月のモンゴルは花の宝庫である。





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道端にキツネの死骸があった。持ち上げてみると、ローラーで轢かれたみたいにペラペラに干からびていた。





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本日の走行距離255キロ。撮影するような場所があまりなく、移動しただけで日が暮れてしまった。長旅ではこういう日もある。バットスフと地図を見て相談した結果、明日はここから約200キロ離れた湖を目指すことにした。
野郎同士は全然ダメ


フブスグル湖から流れ出る川で飲み水を20リットルほど汲み、再びムルンに戻った。モンゴル屈指の名水とも、おさらばである。

フブスグル湖からムルンまでは約100キロ、プルゴンで3時間かかった。とりあえず郵便局へ行って、ウランバートルに住む友人のモンゴル人写真家へ電話をかけ、これまでの状況報告と、今後どこへ行くかを話した。連絡手段が限られているので、どこかの街で僕の消息を伝えておかないと心配してしまうのだ。

電話を終え、プルゴンへ戻るとバットスフが何やら興奮していた。

「シミズ、見た?」

「何? どうしたの? 車、壊れたの?」

「違う違う。今、郵便局に歌手のサラントヤーが入ったでしょ」

「今、入った人? あ、そうだった?」

サラントヤーはモンゴルポップス界の女王で、抜群の歌唱力の持ち主である。僕もプルゴンでの移動中によく聴いているが、モンゴル人で知らない人はいないと思う。

「どうするシミズ? 待つ?」

「えっ、なんで? いいよ、行こう」

「あの日本製の新しい4輪駆動車に乗ってきたんだ。フブスグル湖へ休暇に行くんだよ、きっと」

「やっぱ、金持ちは違うねぇ」

日本車はちょっと羨ましかったが、僕にはロシア製の車で十分だ。ゆっくりと時間が過ぎるモンゴルでは、プルゴンでの移動の方が楽しい気がする。

ムルンを出てすぐ、ザム沿いに小鳥の群れが飛んでいるのが見えた。

「何だ、あれは?」

「鳥だね」

「分かってるよ、それは。あ、ツバメだ」

ツバメはザム沿いの乾いた土手に無数の穴をあけ、そこを巣にしているようだ。巣の中から、雛ツバメがひょっこりと顔を出しているのが見えた。

「かわいいねぇ」

土手は、ちょっとしたツバメのマンションになっていて、忙しそうに親鳥が雛に餌を運んでいる。僕は車から降りてそっと撮影しようとしたが、親鳥が異様に警戒して上空を旋回し、巣に戻らなくなってしまった。餌を待っている雛が可哀想なので、撮影はあきらめることにした。

動物(鳥)の写真を撮影するには習性を理解し、それなりの時間をかける必要がある。動物にストレスを感じさせないようにしなければ、自然な撮影はできない。ついでに撮影しようとするから、このような愚かなことになってしまうのだ。

「ツバメくんたち、ゴメンなさいね」

車に戻って後ろを振り返ると、親鳥たちは雛に餌をあげていた。

その後、山道に入る手前で花の群落を見つけた。モンゴルは高山植物がいろいろと咲いているので、花の好きな人にはたまらないだろう。花の知識がない僕には、色や形を見て「綺麗だな」と思うぐらいしかできなかった。

「ちょっと、花の勉強をした方がいいよな。もしかしたら貴重な花もあるかもしれないし……」

バットスフに聞いみたが、何も知らないそうだ。まったく、野郎同士は全然ダメである。

プルゴンでさらに移動すると、動物が横たわっているのが一瞬見えた。

「何だった?」

「キツネが死んでた。撮る?」

「撮る」

プルゴンを降りて、その死骸の側まで行くと少し腐った臭いがした。死後数日は経っているようだ。数枚撮影してから、キツネを持ち上げてみるとペラペラに干からびていた。

「ありゃりゃ、ローラーで轢かれたみたいにペチャンコになってるよ。かわいそうに」

キツネの死骸を撮影してからは、これといった場所もなく、夕方までプルゴンを走らせるだけであった。

「今日、何キロ走ったかな?」

「山道も入れて、250キロ以上だね」

「結構走ったね。でも、そのわりには何もなかったなぁ。全然、写真撮れなかったよ」

「明日はいいかもね」

「そうだといいね」

薄暗くなってきたので、今日はこの辺りでキャンプをすることにした。バットスフと地図を見ながら、これからどこへ行こうか考えた。

「ゴビでは乾いた風景ばかりだったから、今回は、ずっと潤った風景がいいなぁ。フブスグル湖が良かったので、また湖や川がある場所へ行きたい」

ここから200キロぐらい行くと、テルヒン・ツァガァーン・ノールという湖があるようだ。そこへ行ってみたいと思った。

「いいよ、いいところだよ。そこは昔、火山があったんだ。噴火口を見られるよ」

「へぇ〜。モンゴルに火山があったの? 是非、行ってみよう」

次の目的地が決まり、僕らは、ちょっとホッとした。