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見た瞬間、「ヤバイだろ、これは」と思えるほどのボロボロ橋が、僕らの行く手に立ちはだかった。周囲を窺ったが、迂回路は見当たらない。バットスフと相談して、この橋を渡ることにした。
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川で獲物を狙うアオサギを、500ミリの望遠レンズで撮影した。日本でも見られる鳥を外国で見ると、なんだか嬉しかったりもする。 |

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アイラグ売りと話をしていると、馬に乗った遊牧民のオジサンが近寄ってきた。僕のカメラを見ると、「飲んでいるところを撮れ」と得意げにポーズをとった。
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遊牧中のヤギやヒツジたちに道を占領されてしまった。バットスフはクラクションを鳴らして道を空けさせようとしたが、これは「シャッターチャンス」なので、僕は家畜たちの後をゆっくり走るように指示した。こんな田舎道を急いでも得することはないのだから……。
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夜になって、目的地のテルヒン・ツァガーン・ノールに到着し、キャンプを張った。翌朝、はっきりしない天気の中、雲間から陽が差した。
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一か八かの勝負
「アイヤイヤ〜、モーバイナー(よくないなぁ)」
「ヤサァン?(どうしたの)」
僕らの目の前には、10メートルほどの木製の橋がかかっていた。“木製”というと聞こえはいいが、実際は朽ち果てたボロボロ橋であった。
プルゴンを停め、見に行ってみると、“木製”の橋は隙間だらけで下に川が流れているのが見えた。高さはそんなにないものの、「もしも……」と考えるとやっぱり怖い。木が折れ、隙間から落ちれば、プルゴンは確実に逆立ちしてしまう。
「わたっ、渡るの?」
「……」
バットスフも、浮かない顔をして悩んでいる。
「他に道はないかなぁ?」
「……」
「どうしようかねぇ?」
「……」
「行ってみますか!」
「……行こう」
プルゴンに戻ると、バットスフはギアをバックに入れた。助走をつけるため10メートルぐらい車を下げると、前を見つめた。
「行くよ、いい?」
「いい、いい」
ローギアのまま一気にアクセルを踏み込むと、タイヤはうなり、“木製”の橋へと向かった。橋が壊れる前に渡りきろうという、一か八かの勝負である。
国民性なのか、どんな場面でもモンゴル人はこういう考えの人が意外と多い。石橋をたたいて渡るような“みみっちい”ことはお気に召さないようだ。
橋に差し掛かると、プルゴンの車体は右に左に動いた。
「おぉっ、おぉっ」
バットスフはその動きに合わせて、巧みにハンドルをさばいている。僕は座席にしがみつき、橋を渡りきるのをただ待つしかなかった。
「あと7メートル、5メートル、3メートル、2メートル、1メートル……」
プルゴンは無事、橋を渡った。バットスフも実は“ビビッていた”ようで、渡りきると安堵のため息をついた。
「ふぅ〜、怖い怖い」
バットスフの話では、モンゴルには“木製”の橋が他にもいっぱいあるそうで、この橋はまだまだ距離が短いとのこと。長生きしようと思ったら、できるだけこういう橋は渡りたくないものである。無事に渡れたとしても、心臓に悪い。
しばらくザム沿いに走っていると、アイラグ(馬乳酒)売りの遊牧民2人に出くわした。まるで商売っ気のない彼らは、アイラグの入ったポリタンクをザム近くに置き、炎天下、地べたに座って話をしていた。
僕らが近づくと、売り物のアイラグを茶碗に注いで迎えてくれた。
「どこから来たの?」
「フブスグル湖から。この辺に休火山があるって聞いたのだけど、知ってますか?」
「あぁ、知ってるよ。もう少し先にある」
「アイラグ、美味しいですねぇ」
「まぁ、もう一杯飲みなよ」
僕らも地べたに座り、すっかりくつろいでしまった。帰り際、バットスフが舌なめずりしているので、アイラグを10リットルほど買った。今晩寝る前に、また飲もう。
「良い旅を……」
「ありがとう」
モンゴルの田舎を旅していると、僕は時間が経つのをほとんど気にしなくなる。人に出会うと「別に急いでいるわけではないし……」と、ついつい長居してしまう傾向があるので、なかなか目的地に到着しないのだ。
親しくなって「じゃぁ、ご飯でも」なんて誘われると気軽にOKしてしまうのだが、それから火をおこしたり、食事の準備にかかるので、“ちょっとだけ”のつもりが数時間は待たされることになる。まぁ、ぜいたくと言えば、ぜいたくな時間の過ごし方ではあるのだが……。
「日が暮れちゃうねぇ、湖を目指さねば」
「シミズ、まだ峠とかあるよ」
「あぁ、そうなんだ。湖が見えたところを今日のキャンプ地にしようよ」
「そうしよう。アイラグが待っているしね!」
「それまで頑張ってね」
昨日のキャンプ地から次の目的地テルヒン・ツァガーン・ノールまで、たかが200キロ、されど200キロであった。でもモンゴルを旅するには、ゆっくりと時間をかけたほうが断然面白いのである。
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