●モンゴルの楽しみ方
モンゴルの旅はディープだ。至れり尽せりの旅に慣れている日本人が、モンゴル人と一緒にモンゴルを旅すると、不満なことも多いと思う。僕もモンゴルを初めて旅したときは、いろいろ気になったが、怒りたいことがたくさんありすぎて、そのうち、どうでもよくなってしまった。「モンゴルはそういう国なのだから仕方がない」と腹をくくらなければならないことは、あまりに多い。でも、そう思ってしまえば、楽しめることはたくさんあるし、とても魅力的な国でもある。

小ネタ、あれこれ


「モンゴルは奥が深く、草原のほかにも魅力的な場所がたくさんあるんだ」ということを、たくさんの人に伝えたくて、これまでいろいろ書いてきたが、連載の中では触れられなかった“小ネタ”もいろいろある。モンゴリアン・チョップVの最後に、そうした話をいくつか紹介したい。なお、来週からはモンゴリアン・チョップをちょっとお休みして、新しい企画が始まる予定なので、どうぞお楽しみに。




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連載の中で何度となく登場してきたアイテム、G.P.S。機能がカーナビに似ているというのは知っていても、実際にどういう大きさのものなのかご存じない方が多いと思う。写真の通り、意外とハンディーな大きさである。これは秋葉原で4万円程度で購入したアメリカ製のG.P.Sだ。主に現在地の緯度を計測するのに使っているが、行ったことのない土地の大体の緯度をインプットしてナビゲートしてもらうこともある。1度行った地点を計測して記憶させておけば、第19話のように、再び同じ場所までナビゲートしてもらうこともできるスグレモノ。ただし、G.P.Sを使うには正確な緯度が書かれた地図と照らし合わせる必要があり、僕は航空地図に計測地点を記入しながら使っている。

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ゴビ山中の“秘密の井戸”で水を汲むドルジ仙人。実はこの井戸、ドルジ仙人が“せっせこ”と掘って作ったらしい。小さな井戸だったが、最高に冷たい水を汲むことができた。氷も冷蔵庫もない山中で冷たい水をゲットできるのは、感動モノである。仙人が水を汲んでいる間に、ちゃっかりG.P.Sに場所をインプットさせてもらった。初めての出会いで、この場所を案内してくれたドルジ仙人の寛大な心に、感謝、感謝である。他にもいくつか“仙人の秘密の井戸”はあるのだが、別の場所で水を汲もうと桶を入れたら、水位はなく、たくさんの虫の死骸をすくってしまった。これにはさすがのドルジ仙人も僕も“ぶったまげた”。しばらく使わないと、そういうこともあるので、喉が渇いたときに“秘密の井戸”を見つけても、迂闊には喜べなかったりもする。


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モンゴルに行き始めた頃、モンゴル人の動物写真家にガイドを依頼したことがあった。その人は過去にユキヒョウを撮影したことがある有名な写真家らしいのだが、ガイドとしては、からきしダメだった。ウランバートルを出発する時には孫(超ワガママだった)を連れて行くと言い、地方では、情報を聞きに行くといっては知り合いや親戚のゲルを訪ねて、昼間から大酒を飲み、酔っ払ってフラフラになりながら、また次のゲルへ……。結局、ガイドとは名ばかりで、ただの親戚周りに付き合わされただけだったのである。その人が飲み水用に用意してくれたタンクが、また信じられないものだった。フィルム現像に使う“定着液”という薬品が入っていたものだったのである。いくら洗ったとはいえ、そんなタンクに入れた水を飲んでも大丈夫なのだろうか。今のところ、僕の体に異常はないが……。


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プルゴンに積んだドラム缶とタイヤ。タイヤはスペアだと思っていたら、運転手が途中の街の知り合いに届けるためのお土産だったらしい。なんてこった! ドラム缶は平原の真ん中でガス欠になっても補充できるように、必ず積むようにしている。プルゴンの燃費がすこぶる悪いのと、故障すると、えらくガソリンを使ってしまうこともあるので、“ガソリン問題”は僕らにとって要注意事項なのだ。予備や調理に使うことなども考えて、毎回ウランバートルで約100リットル分のガソリンを購入しているが、旅から帰る頃にはすっかりなくなってしまう。基本的には、行く先々の街のガソリンスタンドで入れるようにしているのだが、ガソリン代が高いのと、時間によっては人がいないなど、いろいろ問題もある。


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移動中に見つけた水場の近くに、たまたま果物の木があった。一緒に乗っていたバブーというモンゴル人は、その木を見つけると、鍋を持って大喜びでプルゴンを飛び降りた。「この木の実は美味いんだ。これで果実酒も作れる。真っ赤な“奴”がいい」なんて言いながら、その木の実を収穫していたが、数個とっては口に入れているので、なかなか鍋にはたまっていかない。しかし、そこはモンゴル人。この写真を撮影した後、時間をかけて鍋一杯にしてしまった。気がついた頃には、水場の周りの木は、1個も実が残っていなかったのである。「あぁ、あぁ、また乱獲しちゃったよ。ほんと、あればあっただけの人種なんだから……」と日本語で愚痴ってみたりする僕なのである。


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プルゴンで初めて旅行した時、最初に食べたのがコレ。「なんだ、普通のパンと肉じゃん」とお思いでしょうが、ちょっと違うんだな。とりあえず、パンに肉を挟んで食べようと喰らいついたその時、鼻をつく臭いが口の中に広がった。他の人も、眉間に皺を寄せている。「もしかして……」と思い、パンの臭いをかぐと、ガソリンのような揮発性の臭いがした。そういえば、ウランバートルを出発してすぐにドラム缶からガソリンが漏れ、車内がガソリン臭に包まれたことがあったような……。どうやら、その時にパンや肉などの食料にもガソリン臭がしみついてしまったようである。僕らは、その後も仕方なしにガソリン臭のしみついた食料を食べ続けた。カラダに害はないのだろうか? 今のところ、僕の体に異常はないようである。
by 清水哲朗